WILLナビ:よみうりGENKI 次代を担う人材を育てる中高一貫校特集
これからの時代に求められる人材像─私立中高一貫校で育む力─
  1. 中学では生活習慣と学習の基本を 高校では自ら考え行動する力を
  2. 本物体験と生徒主体の活動のなかで切磋琢磨しながら大きく成長
  3. 先輩の活躍が大きな刺激に 見える目標があるから頑張れる
中学では生活習慣と学習の基本を 高校では自ら考え行動する力を

 駒場東邦は今年で創立60周年を迎えました。戦後の貧しさから脱却した1957年、「青少年に明るい未来への夢を持たせよう」との思いで、東邦大学の理事長であった額田豊博士と、都立日比谷高等学校の校長であった菊地龍道先生によって設立されました。初代校長の菊地先生は「天然資源が乏しい日本では頭脳の資源化こそ急務である」と考え、「科学的精神に支えられた合理的な考え方を持ち、自主独立の精神にあふれた人物の育成」をめざしました。その思いは今も教育の基本理念として受け継がれています。
 教育方針としては、まず中学3年間は、基本的な生活習慣や学習方法を身につけられるように指導し、後半の高校3年間で「自ら考え行動できる」ように導いていきます。中学の学習では平常授業の中で小テストを行い、つまずいたら、そのつど教員が指導する形をとっています。どこかでつまずいてわからなくなると、勉強していても楽しくありません。理解しておもしろいと思えば、次の段階に進むことができるからです。
 教科の学習においては、すべての教科で「自分で考え、答えを出す」習慣を身につけることを重視しています。このため、入学当初からレポート作成の課題を多く出し、6年間を通して自分の頭で考え、物事を探究していく姿勢を養っています。また、各教科でバランスのとれた能力を身につけることも重視しています。早くから文系・理系分けをせず、高2終了時までは全員が理系数学に取り組み、古文・漢文も全員が学びます。どの教科もバランス良く学んでおけば、将来、どのような道に進むにせよ、自分がやりたいと思ったときに動き出せる土台をしっかりと築いておくことができます。

本物体験と生徒主体の活動のなかで切磋琢磨しながら大きく成長

 中学から高校の6年間は、将来大人になるための土台作りの大事な時期です。この時期は心も体も大きく成長します。視野を広げ、認識力を高め、自己探求や他者とのかかわりを深めていきます。本校では、この時期に生徒ができるだけ本物に触れる経験ができるようにと考え、そのための機会をたくさん設けています。林間学校で五感を研ぎ澄ませて自然観察するという経験もそうですし、交換留学生基金を利用したアメリカ留学や台湾留学などの国際交流もその一つです。また、発達段階にふさわしい生活や活動を十分に経験しておくことも重要です。このため、中3の研究旅行では奈良・京都に出かけ、各自が設定した研究テーマに基づいて論文を作成します。高2の修学旅行では、行先の選定にも生徒がかかわり、その年度にしかない独自の旅行を創り上げていきます。これらは駒場東邦が積み上げてきた「文化」といってよいでしょう。
 こうした「文化」を背景として、生徒の多くは部活動や委員会活動など学習以外の活動に積極的に参加しています。たとえば新しいクラブをつくりたいなど、何かやりたいことがあれば教員に話を持ちかけ、職員会議で通れば希望が実現します。部活動や同好会の数は毎年変化しています。それは生徒による行政委員会が毎年審査を行い、活動条件を満たしていない部を廃止したり、新しい同好会の設置について取りまとめたりしているからです。このように学校生活は生徒主体で動いており、生徒たちはさまざまな体験のなかで仲間と切磋琢磨しながら大きく成長しています。

先輩の活躍が大きな刺激に 見える目標があるから頑張れる

 仲間といっても、クラスや学年といった横のつながりだけではありません。部活や行事などにおける縦のつながりもとても緊密です。そうしたつながりのなかで協調性、思いやり、リーダーシップなどが育っていきます。たとえば、体育祭は4色のチーム対抗で競いますが、中学入学時に決まった自分の色は、その後6年間ずっと変わりません。中1の生徒が“5歳年上のお兄さん”から指導を受け、5年後には自分が“5歳年下の弟”を引っ張っていく。こうして11年間のつながりが生まれます。これが本校の仲間意識の強さを生んでいます。行事や部活などで指導を受けてきた先輩が第一志望の大学に現役で合格すれば、「やっぱりあの先輩はすごいな」という気持ちが湧き、自分も頑張ろうと思います。
 後輩を思う先輩たちの気持ちは卒業後も続きます。OB会組織「邦友会」は、国内はもちろん、海外にもネットワークがあり、海外留学などをサポートする態勢が整っています。また、創立50周年のときに邦友会が立ち上げた人材育成基金は、外部講師を招いての講義や、各分野の第一線で活躍する卒業生たちを呼んでの講演会などに広く活用されています。先日も京都大学教授で仁科記念賞を受賞した物理学者のOBが講演に来てくれましたが、終了後は生徒たちに囲まれて質問攻めにあっていました。OBが所属する研究所で、先端技術の実例を見せていただく機会もあります。卒業生が実際に活躍する姿を目にすると、自分の目標が身近に感じられ、大きな刺激になります。
 本校にはやりたいと思ったことを、みんなで知恵を出し合って実現できる自由があります。仲間と協力していろいろな活動をすることによって、自分の中に眠っていたものが目覚めていく。本校の自由闊達な校風のなかで、そんな経験をたくさんしてほしいと願っています。

OBポスター
▲OBが大切に保管していたという歴代の文化祭や体育祭のポスター
これからの時代に求められる人材像─中高一貫校で育む力─ 駒場東邦中学校・高等学校 校長 平野勲先生 雙葉中学校・高等学校 校長 和田紀代子 先生 渋谷教育学園幕張中学校・高等学校 入試対策室長 永井久昭 先生