WILLナビ:よみうりGENKI 次代を担う人材を育てる中高一貫校特集
これからの時代に求められる人材像─私立中高一貫校で育む力─
  1. 世界を舞台に活躍し人類社会に貢献できる人に
  2. 開校当初から国際交流を推進海外の大学にも多数が進学
  3. 6年間の発達段階に対応して行われる「校長講話」は将来を考える契機に
世界を舞台に活躍し人類社会に貢献できる人に

 渋谷幕張は1983年に開校され、今年で34年目を迎えました。開校した1980年代当時は、ハーバード大学教授エズラ・ヴォーゲル氏の世界的ベストセラー「ジャパン・アズ・ナンバーワン」によって高度成長期の日本の勢いが世界の注目を集め、さらに1985年にはプラザ合意によって日本の円が世界通貨になり、日本人も世界を舞台に活躍する時代を迎えました。今でいう「グローバリズム」です。このような世界情勢を背景に、国のためだけではなく、人類社会のために活動し、それが結果的に国のためになるという考え方のできる子どもたちを育成したいという思いで、田村哲夫校長以下、教職員が一丸となって本校はスタートしました。
 大きな変化、将来に対する見通しが非常に厳しいということを念頭に、校長が建学の理念としたのは「ラーニングトゥビー(Learning to be)」という考え方です。これは、日本語では「未来への学習」と訳されていました。学ぶ内容も大事だけれど、どのような考え方で学んでいくのかという「学び方」「学ぶ姿勢」、この基本的なスタンスをしっかりと教えることが「ラーニングトゥビー」です。ただ「未来への学習」とか「ラーニングトゥビー」といっても、小学生や中学生にはわかりにくいということで、たどり着いた言葉が「自調自考」です。与えられた知識を覚えるだけではなく、自ら調べ、自ら考える姿勢がなければ、複雑化した課題を解決することはできません。本校では、「自調自考」という教育目標の下、未来の時代を予測して「学ぶ力」を身につけるということを教育の基本にしています。

開校当初から国際交流を推進海外の大学にも多数が進学

 本校では開校当初から、生徒たちの世界での活躍を目標に教育に取り組んでいるほか、帰国生も開校当初から受け入れています。異文化を経験している帰国生がいれば、学校の活性化につながり、また多様性を求める心の広さを養う契機にもなると考えるからです。早くから海外研修も実施しており、開校翌年にはアメリカのホームステイ研修をスタートさせました。国際交流も非常に盛んで、現在はシンガポール、ベトナム、中国、アメリカ、ニュージーランド、イギリスなど、世界各地で研修に参加できるプログラムがあります。こうした制度を活用するだけでなく、生徒たちは機会をとらえては積極的に海外に出ています。たとえば世界の高校生が国連本部に集まって行われる高校模擬国連国際大会には、日本代表団6校6チームの一員として、過去10回の大会中7回派遣されました。特に2010年、2012年、2017年は世界各国の参加者の中から優秀賞、2014年は日本人初となる最優秀賞を獲得しました。このように生徒たちが積極的に外に出て行って、本校の教育に応えてくれているのは教員としてもうれしいことです。
 早くから国際化に対応した教育を行ってきた成果は進路選びにも現れています。海外の大学には2015年から2017年の3年間で合計72名(一般生30名、帰国生42名)の現役生が合格しています。海外の大学に進学するための説明会や相談会は頻繁に開かれ、また海外の大学に進学した卒業生が来校して、後輩たちに向けて、高校を出たら多様な進路があること、その一つに海外の大学に進学するという選択肢もあることを話してくれます。そうした先輩の体験談は生徒たちの大きな刺激になっています。

6年間の発達段階に対応して行われる「校長講話」は将来を考える契機に

 本校では学年ごとに各学期2回ずつ、「校長講話」を行っています。これは単なる校長の「お話」ではありません。生徒の発達段階に応じた6年間分の授業内容があらかじめシラバスに示されています。テーマは学年ごとに決まっており、中1は「人間関係」、中2は「自我のめざめ」、中3は「新たな出発(創造力)」。高1は「自己の社会化」、高2は「自由とは」、高3は「自分探しの旅立ち」です。この授業では文学作品や論説文、新聞記事などを参考資料として使うほか、それをひと通り読むだけでもバランスよく教養を身につけられるようになっています。また6年間35回に及ぶ「校長講話」は視野を広げ、将来の進路を考えるきっかけにもなっています。
 キャリア教育については「中1・2」、「中3・高1」、「高2・3」の3つのブロックに分け、「自分を知る」「社会を知る」といったところから始めて、段階的に自分の将来像を描けるように進めています。現役医師などによる医薬系セミナー、弁護士による法曹セミナー、企業セミナーや外務省セミナーなど希望の進路に応じたさまざまなプログラムも用意しています。
 先行きが不透明な時代にあって、将来に対する漠然とした不安を抱かれる方も多いと思います。しかし本校には、12歳から18歳までの6年間、それぞれの生徒たちが自分で調べ、自分で考え、自分自身の「夢」を見出し、そしてその「夢」の実現に向かって希望を持って楽しく過ごすことのできる雰囲気があります。自分自身の成長を実感でき、共に成長を実感できる仲間もいます。そうした場に進むことに喜び励みを感じてがんばっていただきたいと思います。

これからの時代に求められる人材像─中高一貫校で育む力─ 駒場東邦中学校・高等学校 校長 平野勲先生 雙葉中学校・高等学校 校長 和田紀代子 先生 渋谷教育学園幕張中学校・高等学校 入試対策室長 永井久昭 先生